「あ、あんちゃんその顔はもらえるって自負してたでしょ?」
「かなりね……。コレ……もらえなかったら俺ショックかもしれない」
 何せ、翠葉が幼稚園に上がってからずっと何かしらもらってきたんだ。
 それこそ、最初は折り紙で作ったチューリップやコップだったわけだけど、小学校に上がったら溶かして固めるだけのチョコレートになって、小学二年生のときにはコーンフレークにチョコをまぶして固めたもの。三年生のときにはココアのトリュフ。四年生のときにはココアとホワイトチョコのトリュフ。五年生のときに初めてフロランタンを焼いてくれた。六年生のときはガトーショコラに挑戦してくれた。中学に入るとお菓子のほかに手編みのマフラーが付随した。去年はからし色のマフラーとベイクドチーズだった。それが今年は――。
 考えてみたら編み物を用意する時間はなかったはずだし、授業に遅れないようにと日々追われるように勉強をしている。今は学期末の進級テストに狙いを定めて猛勉強中といったところだろう。