「どんなタイミングで、どんな経緯でオルゴールが若槻の手元に返ってきたとしても、そんなに状況は変わらなかったと思う」
「そんなっ――じゃぁ、どうして私だったんですかっ!?」
 どうしてこんな役を私が……。
「悪いわね、そこら辺は私の勘よ」
 勘、それだけで――。
 でも……。
「湊先生、ごめんなさい。今のは八つ当たり」
 そう言って先生から離れた。
「私がオルゴールを持っていたのは事実で、お姉さんから託されたのも私なの」
「…………」
「だから、やっぱりこの役は私の役だった」
 湊先生はため息をつくと、
「ものわかりが良すぎるのも問題ね」
 と、口にした。
「若槻が謝りたいって言ってる。どうする?」
 唯兄はもう平常心に戻ったのだろうか……。
 いや、そんなわけはない。
 きっと、私を振り払ったことに対してだけ謝罪をしたいということだろう。