光のもとでⅠ

 声が一トーン上がり、それはそれは嬉しそうに話す。
 始まる――この人のシスコントークが。
「チョコレート食べてるときは、アンダンテの苺タルトを食べてるときと同じくらいに頬が緩んで美味しい美味しいって食べてくれるから、そのほうが食べられるチョコも幸せでしょ?」
 そういう問題か?
「でもって、ホワイトデーのお返しには翠葉が作ったお菓子配ってます。これが結構評判良くて。去年はレシピ教えてほしいなんて子もいたな。それを翠葉に伝えたら、また嬉しそうな顔をしてせっせとレシピを書いてくれるんですよね。甘いものは苦手だけど、翠葉の作ったものは甘さ控えめだから俺も好きなんですけど。さらにはそのレシピで作ってきたお菓子を試食してほしいって言われるから、持って帰って翠葉と一緒に食べるんです」
 見なくてもわかる。きっと目尻を下げて、でれっとした顔で話しているのだろう。
 でも、そのお菓子って「リベンジ」なんじゃないの? それを妹と食べて感想言われた時点で作ってきた人間の思惑は見事にスルーされていると思う。――恐るべきスルー力の高さ。しかも、疑うまでもなく「無意識」であるところが痛すぎる。