光のもとでⅠ

 例えば、食べると口の中の水分を根こそぎ持っていかれるケーキだとか、硬すぎるマフィンとか……。ひどいものは焦げているらしい。
 そんなものを「プレゼント」としてよく人様に渡せると思う。俺にはその気が知れない。
 栞さんはそれらを砕いたり、チーズグレーターで削ったりして粉状にしたところからなんとか食べられる状態にする。それらがどうなるかというと、マンションの住人を自宅に招いて試食会と称したお茶会でのお茶請け……否、立派な主役となる。
 こうやって人の手により着々と消化されるチョコレートたち。
(人に食べてもらえたなら消化と言ってもいいと思う。ただ、秋兄が消費という言葉しか使えない事実には変わりない)
 だいたいにして、甘いものが苦手なら最初から受け取らなければこんな面倒なことにならなくて済むものを……。
 カウンターに置いてあるカップに手を伸ばし、まだ熱いコーヒーをすする。