誰も、あれが秋兄がもらってきたチョコレートのリメイクとは思っていない。
 知っている人がいるとしたらひとりだけ――コンシェルジュ統括者、崎本さんの奥さん。美波さんにはばれていそうだけど。
 栞さんのもとに持っていかれるものは、チョコ以外の市販のクッキーなども数多く含まれる。それを栞さんは食べられるものと食べられないものに分け、食べられるものはそのままほかのお菓子にリメイクする。こっちの作業はあまり難しくないらしく、それらはガトーショコラやプティングに変身する。
 問題なのは食べられそうにない手作りのお菓子。この場合の「食べられそうにない」というのは、加熱が足りなくて半生であるとか、粉が混ざりきっておらず、白いものが見えている……とか、そういったもの。
 何かしらレシピを見て作っているとは思う。――が、分量を間違えるか混ぜる順番を間違えるかするのだろう。
 俺に言わせると、「食べ物」には到底認められないものが数多く含まれる。