秋兄は、毎年もらってきたそれらを母さんと栞さん、それからマンションのコンシェルジュのところへ持っていく。
 ミルクチョコレートと飴は母さんへ。ビターチョコレートはコンシェルジュ。手作り物など対処に困るものは栞さん。
 母さんはそれらを溶かしてお菓子を作るか、そのままの状態を楽しんで食べる。最近はカカオ率の高いチョコレートが出回っているようだけど、
「苦いチョコレートを食べてもチョコレートを食べた気がしないのよね。やっぱり甘くて幸せな気持ちになれるのがいいわ」
 と、母さんはミルクチョコレートを好む傾向にあった。
 ビターチョコレートは安物から高級なものまでピンキリらしい。それらを溶かし香り高いリキュールなどを加え、高級感を持たせたスイーツにするのはコンシェルジュ。出来上がったものはマンションの住人に「サービス」として振舞われる。