翌日、私は朝から高校の教科書を広げていた。今は登校できてなくてもいつか登校できるその日まで、私はひとりで勉強するしかないのだから。
 学校はどこまで進んでいるだろう……。
 不安はあるけれど、今は自分にできることをがんばろう。
 今、目の前にあるもの――それらを受け入れることだって大切なことなのだ。
「……数学も化学も好きなんだけどなぁ。英語と古典はサッパリ」
 夕方には蒼兄が来てくれる。そしたら教えてもらおう。
「翠葉ちゃーん、私これから休憩なんだけど。今日、曇りだから中庭そんな暑くないと思うの。一緒に行く?」
「え……いいんですか?」
「ちゃんと紫先生の許可も取ってあるよ」
 水島さんは腰に手を当てて自慢げに話した。
「嬉しい……」
「よしよし、素直でよろしい」
 水島さんは満足そうに頷くと車椅子の用意を始めた。