「先生ありがとうございます」
 私が口にすると、お父さんもお母さんも蒼兄もみんなが頭を下げた。
「この時間は暑いからね。夕方にでも楓先生に連れていってもらうといい。翠葉ちゃん、誕生日おめでとう」
 そう言うと、紫先生は病室を出ていった。
「翠葉、良かったわね?」
「良かったな?」
 お母さんと蒼兄に言われて、今度こそ心から笑って「うん」と答えられた。
「お父さん、ありがとう」
「うんうん。喜んでもらえて良かったよ。でも、それは父さんからだけのプレゼントじゃないぞー? 蒼樹もバイトで稼いだ金を出してる。家族三人からのプレゼントだ」
 満足そうに笑うお父さんの顔も、お母さんの笑顔も蒼兄の笑顔も大好き。何より――自分が心から笑えたことにほっとした。