光のもとでⅠ

 不透明、不鮮明、色彩の欠如……。
 苺タルトの苺は赤いと思うし、ロウソクの色だってわかる。でも、何かが違う。
 窓の外に視線を移し、視界に入るものひとつひとつを見て思う。何も感じない、と……。
 私、どうしちゃったのかな……。
 どうしたら緑が緑に見える? どうしたら空がくすまずきれいに見える?
 どうしたら、この世界の「色」を取り戻せるだろう……。
 ここのところ、ずっとそれを考えていた。
 体調に関しては今さら……と思うことのほうが多く、入院している現時点で自分がどうこうできるものではない、とそう思っていた。
 気持ちの持ちようでどうにかなるものなら、私はここにいない。
 これから、自分がどこに向かっていくのか。どんな人生を歩むのか……。
 先が見えない。先を想像することができない。先を知ることが怖い。
 退院したら学校へ行く。そんなことはわかっている。
 違うの――私が不安に思うのはもっと違うものなの。