光のもとでⅠ

「楓先生から翠葉ちゃんの誕生日のことを聞いてやってきたんだよ」
 楓先生を見れば、
「自分は水島さん経由で情報ゲット。ごめんね、プレゼント用意してなくて手ぶらなんだけど」
 と、軽く両手を上げて苦笑した。
 そんな楓先生に水島さんは、
「じゃ、プレゼントはハッピーバースデーの歌で!」
 ロウソクに火を灯しみんなでハッピーバースデーを歌うと、最後に蒼兄とふたり「いっせーのぉせっ!」で火を吹き消した。
 その場はとても賑やかだった。
 切り分けたタルトをフォークで突いて口に運ぶみんなは笑顔そのもの。タルトは美味しいし、私もそう思ってるはずなのに、心はどこか遠くにある。自分は確かに「ここ」にいるのに、心だけが「ここ」にない。
 何もかもが不透明。言葉がおかしいかもしれないけど、その言葉しか思いつかない。