「そう。今日はホールの苺タルトよ!」
 私は「アンダンテ」というお店の苺タルトがとても好きだった。ここのタルトは直径三十センチの大きなタルトで、ピース売りされているものは十個に切り分けられ、ひとつ五百円で売られている。
 アンダンテのショーケースに並べられたケーキやタルトの数々は、どれも宝石を散りばめたように美しい。とりわけ、この苺タルトだけは別格。
 季節を問わず、いつでもルビーのように真っ赤に熟れた甘い苺が敷き詰められていて、苺の上から塗られるゼラチンが光沢感を助長し、より煌びやかに見せている。
 いつもはピースでしか買わないタルトが、今、目の前にホールごと置かれていた。
「すごい……」
 気分の高揚を感じ、そんな自分の変化にほっとした。
 喜ぶ私を目の前に、
「もうひとつのプレゼントはもっとすごいぞぉっ!」
 お父さんが「もうひとつ」のプレゼントをベッドの陰に隠す。