光のもとでⅠ

 慌てて断る私に、
「翠葉ちゃんはもっと周りの好意を素直に受け止めるべしっ!」
 額を軽く小突かれた。そして突如、
「柑橘系の香りは好き?」
 柑橘系の、香り……?
「はい……好きです」
「前にね、蒼樹くんと話してるのを偶然聞いちゃったの。病院の消毒薬の匂いとか、あまり好きじゃないんでしょ? ま、好きな人なんてあまりいないけど」
 全否定で「いない」と言わないあたり、もしかしたら、この消毒薬の匂いが好きな人がいるのかもしれない。
「あ……でも、我慢できないほど嫌いとか、吐き気がするとかそういうわけではないので……」
「ほらほら、そんなに恐縮しないのっ。仕事柄、勤務時間に香水はつけられないからね。ロッカーに入れっぱなしになってる香水があるのよ。でも、今はほかの香水使ってるから。もし、翠葉ちゃんがその香りを気に入ったら使ってもらえると嬉しい」
 お古だから気にする必要もないのよ、と言って立ち上がった。