「翠葉ちゃん起きてるー?」
 この声は水島さん。水島景子(みずしまけいこ)さんは私の担当看護師さん。
 廊下側だけ閉めてあるカーテンをシャっと開けて入ってきた。
「あ、起きてる起きてる。相変わらず窓際のカーテン開けてるのね? 仕事がひとつ減っていいわ」
 水島さんは両の口端を上げ、にっと笑う。
「ハッピーバースデー! 十六歳おめでとうっ!」
「っ……」
 呆気にとられた私はお礼の言葉すら口にできない。
 確かに今日は私の誕生日だけれど、まさか看護師さんにお祝いの言葉をもらえるとは思っていなかった。
「なぁに? まだ若いんだから年取ることに抵抗なんてないでしょ?」
「あ……えと、そうじゃなくて……『おめでとう』を言ってもらえたことにびっくりしてしまって……」
「やぁね。私だって担当患者の誕生日くらいは把握してるのよ?」