「俺には三つ年下の妹、芹香(せりか)って子がいてね、生まれつき心臓が悪かったんだ。何度か手術もしたんだけど、最終的には移植するしか助かる方法がなくて、金もない、移植の順番もいつ回ってくるのかわからない、そんな状況に絶望した両親が、病院からセリを連れ出しそのまま車で一家心中――ま、一家って言っても俺は生きてるわけで、その車にも乗ってなかったんだけど。早い話、取り残されたわけだ」
 唯兄は淡々と話すけれど、聞いている私は淡々と聞ける内容ではなくて、しまう引き出しが見つからない言葉は無秩序にどんどん溢れていく。
「まだ俺が中学の頃、音楽や花が好きだったセリにオルゴールをプレゼントしたんだ。そのオルゴールにはちょっとした仕掛けがしてあって、鍵がふたつないと曲が聞けない仕組みになってた。これ、俺が初めて作った機械仕掛け。アナログだけどね……。でも、中学生だった俺にしては上出来だったと思う。セリもすごく喜んでくれて、毎日ふたりでオルゴールを聞いたよ。セリにはトルコ石がはめこまれた鍵を渡して、自分にはガーネットの石がはめこまれた鍵。今朝、リィが拾ってくれたアレ、ひとりひとつずつ持つことにしたんだ」
 ここまでは湊先生聞いていた内容とほぼ同じ。