唯兄はデスクにカップを置くと、私と同じようにベッドへ座った。
 向き合うような形で座っているけれど、どうしても唯兄の顔を見ることができなくて、視線をお布団に落としてしまう。
「聞きたくない?」
「違う……聞きたいの。でも、怖いから……」
「怪談ぽい話をするつもりはないんだけどなぁ……」
「……もう、こんなときに冗談言わないでっ」
「あ、一応冗談ってわかるんだ?」
「……そのくらいはわかるもの」
 唯兄はクスクスと笑った。
「唯兄、提案……。背中合わせでお話しよう?」
「背中合わせ?」
「うん……。向き合ってお話しすると、自分の顔がぐにゃってしちゃいそうだから……。だから背中合わせ希望」
「いいよ、そうしよう」
 その言葉を合図に、ふたりとも後ろを向いて背中をくっつけ体育座りをした。
「じゃ、昔話の始まり始まり」
 どこか茶化した感じでお話が始まる。