光のもとでⅠ

 クラスにも自律神経失調症という女子はいた。けど、翠葉ほど身体が弱いようには見えなかった。その理由が少しわかった気がする。
 同じ名前の病気でも、症状の程度が同じわけではなく、軽度重度とあるらしい。
「それに加えて、翠葉ちゃんの血圧はとても低いんだ。正常値と呼ばれる数値は上が百二十、下が八十くらい。蒼樹くんは翠葉ちゃんの血圧を知ってるかい?」
「いえ、さっき初めて聞きました」
 さっきは六十の四十って――正常値の半分しかないことになるのか……?
「翠葉ちゃんはね、良くても上が八十、下が六十くらいなんだ。健康な人の半分くらいの数値。それが翠葉ちゃんにとっての通常値なんだ。体調を崩すとこれ以上に下がる。翠葉ちゃんの場合、六十五を切ると意識が朦朧としてくるみたいなんだが、私からしてみたら、六十台、七十台前半というのは意識を失ってもおかしくない数値なんだよ。このまま血圧が下がっていくと、心臓のポンプ機能が弱くなりすぎて、体内の血液循環量が足りなくなる。それが即ち心不全の状態だ。こうなるとすぐに昇圧剤を投与する必要がある。普段から昇圧剤を服用してもらってはいるんだが、期待している効果は得られていない。もしくは、飲んでいるから今の数値を保てているだけなのかもしれない。さらには、彼女の血圧は脈圧がないんだ」