「車出すから乗っていけ。うちの私有地を抜ければ五分とかからない。表通りのバスより早い」
「すみません……」
「ほら、行くぞ」
 秋斗先輩に促されるように部屋を出たあとは、ひたすら先輩の背中を追って走った。
 車ならたった数分という距離なのに、もう何十分も乗っている気がした。
 震えが止まらず、自分の身体を抱きしめるようにして両腕を掴む。
 俺がもっと早く家に帰っていたら、こんなことにはならかったのか……?
「蒼樹、着いた。突き当りを右に突っ走れ。左手に救急外来の受付がある」
 俺はお礼も言わずに車を降りて走った。
 翠葉の顔を見たくて。無事な姿を見たくて――。