沸き起こる嫌な感触を振り払って携帯に出ると、
『蒼樹っ!? 病院へ行ってっ。翠葉が心不全で運ばれたのっ。私たちも今病院に向かっているのだけど、渋滞にはまっちゃって動けないの。お願いっ、蒼樹、先に病院へ行ってっ』
 母の、すごく切羽詰った声が耳に響く。
 こんな声、聞いたことがない。
 心不全って……? 心臓が止まったっていうこと?
『蒼樹っ、しっかりなさいっ』
「……わ、わかった。すぐに行くっ」
 何を考える余裕もなかった。とにかく、早く病院へ行かなくては――。
 はじかれるように席を立ち、ドアに向かおうとしたら思い切り腕を掴まれた。
「蒼樹っ、待てっ。おまえ、顔が真っ青だ。どうしたっ!?」
「病院に行きますっ」
「その前に少し落ち着けっ」
 このとき、病院へ行くことしか頭になくて、周りなんてほとんど見えてなかったと思う。
 そんな俺を引き止めてくれたのは秋斗先輩と司くんだった。