海斗くんも唯兄も、よそったトマトサラダは全部食べてくれた。
 蒼兄もカレーを食べつつトマトに手を伸ばす。
 その顔に珍しくしわが寄っていた。メガネのせいかな、と思ったけど、見間違いではなかった。
「蒼兄……?」
「どうした?」
 訊き返してくる表情はいつものものに戻っていたけれど、
「険しい顔してた。……何かあった? お部屋もすごいことになってたし」
「……あぁ、唯が仕事忙しいって言ってただろ? それの手伝いをすることになった」
「秋斗さんのお仕事?」
「そう。出張先から指令が振られた」
 そう答えた蒼兄を唯兄が凝視する。
 蒼兄は唯兄に向かって、
「いつものことだろ」
 と、笑った。
「……確かに。そっか、いつものことだった」
 どこか不自然に思える会話のやり取りだったけれど、私には仕事のことはわからないので、それ以上何かを訊くのはやめておいた。
 約一名、会話に入ってこないと思ったら、海斗くんはテーブルに突っ伏して寝ていた。
 そして、テーブルの片づけを始める人も約一名。言うまでもなく司先輩である。