「なっ……寒いだろ!?」
「寒くない……。ツカサの手、あたたかいもの」
 言って、俺の手に自分の手を押し当てた。
 
 外灯の少ない桜香苑を歩いていると、翠が唐突に「幸せ」と呟いた。
「何が?」
「隣にツカサがいることが……。手、つないで歩けることが。……幸せ」
 すごく嬉しいと思ったのに、俺は素っ気無い言葉しか返せない。
「……安いな」
「え?」
「もっと貪欲になれば?」
 言うと、翠は俺を見て一言「好き」と呟いた。
 俺はその唇に誘われるようにして唇を重ねる。