丼の中にはちくわと卵、鶏肉と長ネギが入っている。
　長ネギは薬味の効果をもつものと、熱が加わって少しとろけているものとふたつ入っていた。
　これ、二回に分けて長ネギ入れたのかな……。
　スープを口にすると、
「鶏がらスープのおうどん……？」
「そう、口に合わない？」
「ううん、すごく美味しい……。なんだか新鮮」
　栞さんが作ってくれる毎朝のお雑炊に似たものがあった。
　思わず、優しい味に頬が緩む。
「そういう顔して食べてくれると作り甲斐あるよなぁ～」
　唯兄に言われる。
「だってとっても美味しい！」
「一口ちょうだい！」
　海斗くんに言われてそのまま器を渡そうとすると、
「海斗、行儀悪い。スープならまだ鍋に残ってるから、そこから取ってこい」
　と、司先輩が厳しく制した。
「一口くらいいーじゃん」
　言いながらもキッチンへ行く海斗くんは素直だと思う。