翠が来たのを確認すると、俺はVIPルームをあとにした。
 自動ドアが開くと蔵元さんが立っており、
「隣のお部屋に湊様、蒼樹さん、唯がおります」
 その一言で、翠がここまでどうやって来たのかがわかった。
 不機嫌の因子がいると知れた部屋に足を踏み入れると、姉さんが立ち上がり、俺のもとまで来ると力加減などない平手を食らった。
 避けられないこともなかった。けど、あえて避けなかった。
 今回のことで誰に責められようとも、それは甘んじて受けるつもりでいたから。
 これもそのひとつに過ぎない。
「あんたっ、なんてことしてくれたのよっ。翠葉の状態はわかっているでしょうっ!? 退院を控えてて大事な時期にっ」
 わかってるけど……。わかったうえで行動したとは考えないものだろうか。