「そんな顔しなくても来る……」
 司が呆れたように口にした。
「なんでそう言い切れる?」
「……そのくらいのことをしてきたから」
 なるほど……。彼女のことを信じていて、さらには自分が取った行動にも自信があるというわけか。
 ノートパソコンに表示される彼女のバイタルは規則正しいとは言いがたい。
 けれど、GPSを使って居場所の特定まではしない。
 今、俺たちが見ているドアが開くか開かないか……。ただ、それだけ。
 六時を過ぎたころ、すりガラスの自動ドア向こうに人の気配を感じた。
 ドアはすぐに開かず、数分経ってからようやく開いた。
 白いコートを着た、顔色が優れない彼女が立っていた。
 彼女は小さく口を開き、何か短く呟いた。