『そこまでずるはしない。あのね、数を……十、数えてもらえる? できれば一定の速さで』
 十……?
「カウントダウンみたいだな」
『あ、ごめん。違うの』
 何が違うんだろうと思っていると、世にも不思議なオーダーが降ってきた。
『あのね、逆なの。一から数えてもらえる?』
 こちらをうかがうようにモニター越しに上目遣い。
 なんていうか、御園生のことをそういう目で見てなくてもちょっとドキっとする。
 あぁ、俺、今、女子と話してるんだって再認識。
「わかった」
 テンポはどのくらいがいいか訊こうとしてやめた。
 人に馴染みあるテンポ。目覚まし時計の秒針を見ながら十を数えた。
「――八……九……十」
 モニターに、両手で携帯を握りしめ耳に当てる御園生が映る。