『佐野くんは優しいね。すごく救われた気分。それに、佐野くんのたとえ話はわかりやすい』
「それは良かった。……ただ、欲を言うなら俺たちと親交を深める努力はして? 俺らも待ったり迎えに行ったりするから。その都度、俺たちの間にある時間でものごと進めようよ。たまには立ち止まって後ろを振り返ってもいいから。だから、一緒に前へ進もう。一緒に卒業してその先もずっと友達でいようよ」
『ん……。佐野くん、本当にありがとう』
「よし、じゃ電話してみ。俺はここにいるから」
 こういう会話、俺は御園生だからできるんだと思う。
 立花や簾条、海斗じゃ無理かも……。
 なんだろう……。先入観も何もなく、ただ口にした言葉をそのまま受け止めてくれる相手だから、口に出せる言葉やできる話ってあると思う。
 気恥ずかしさはあるけれど、話せば話すほどに大丈夫になっていく。
 御園生が全部を受け止めてくれるから。