『でも、人に訊きすぎなのかなって思った。人を頼りすぎなのかなって』
「御園生の場合は両極端かな? 基本、訊かないじゃん。で、訊いてくるときは、もういっぱいいっぱいの状態」
『…………』
 黙るな黙るな……。
 俺は笑いを噛み殺す。
「でも、それでもいいんじゃん? 自分の悪いところに気づける人間は直すこともできる。気づけないよりもずっといい。走るフォームみたいなものだよ。悪いフォームで結果が出ないって伸び悩んで、自分を客観的に見れるか、見て気づいてくれる人が近くにいるか――そんな感じ? 教えてくれることを当たり前だと思わなければいいんじゃない? 教えてくれる人がいるのは自分が築いてきた人間関係の結果なんだからさ」
 何もたとえ話に陸上を持ち出さなくてもいいかなって思ったけど、咄嗟に出てくるたとえはそれしかなかった。
 御園生は洋服の袖で涙を拭い、少し笑った。