これは御園生のお父さんの受け売りなんだけど――。
「取り戻すんじゃない。新しく構築するんだ。……前に零樹さんが雑誌のインタビューに答えてたことだけど、壊れたら直すんだって。最善を尽くして建てたものでも、不慮の事故や自然災害で壊れてしまうことがある。そしたらまた作り直せばいい、って」
 何かのきっかけで読んだ雑誌に書いてあった。書いてあることにぐっと心を掴まれて、その記事を切り取ってスクラップブックに貼り付けた。
『つくり、なおす……?』
「そう……。零樹さんは家のどこかが壊れても、全壊しても、もう一度この人に作ってほしいって思ってもらえる家作りを心がけてるんだって。これってさ、建築だけじゃなくて人間関係にも同じことが言えると思わない? もっと言うなら、零樹さんは建築を通して人間関係を築いてるんだと思うけど……。どうでもいい相手ならこのまま離れるのもありだ。でも、違うんだろ?」
 御園生は小さい子が頷くみたいにコクリと首を縦に振った。