「静さんみたいに何年も想い続けられるかと思ったけど、無理。あんなのできる人間のほうが稀。それをしてもらえると思っていたならご愁傷様。――手に入らないものがいつまでも視界に入るのは目障りだ」
 言って、俺は病室を出た。
「くっそ……」
 追い詰めると決めたからこそ口にした言葉だし、本心も混じってはいる。でも、やりきれない何かが心に居座る。
 精神的に追い詰めていい体調とは言いがたい。でも、秋兄がこのタイミングで動いたのだから仕方ない。
 身動きが取れない状況はもうたくさんだ。
 人を傷つけるとき、自分にも同等の、もしくはそれ以上の痛みが生じるのだと初めて知った――。