「心配なら医務室まで連れて行くけど?」
「……私が行ったところで何ができるわけでもないわ」
 それは自分にも同じことが言えた。こんなとき、自分の非力さを痛感する。
 そこへ御崎さんがやってきた。
「会長の処置は昇様が行われています」
 その言葉に引っかかりを覚えた。
「紫さんと姉さんがいるにもかかわらず、昇さんですか?」
 昇さんなら喘息発作の処置くらい難なくこなすだろう。だが、腑に落ちない。
「紫様は翠葉お嬢様に付き添って病院へ向かわれます。湊様は会場へお戻りになるための支度をなさっています」
 何を言われている? 翠が、なんだって……?
「……レストランで会長と翠葉お嬢様がお会いになられている最中、会長が喘息発作を起こされました。会長の意向で防犯カメラは稼動しておらず、人払いがしてあったため、お嬢様が人に知らせるために走られたのです。その結果、心臓の状態が思わしくないようです」