『お嬢様はステーションの非常階段を走っていらっしゃいます。すぐに警備のものが確保いたします』
 切羽詰まったような言葉に不安を煽られる。
「会長はっ!? 妹は会長と一緒だったはずなんですが」
『会長がレストランで喘息発作を起こされました。防犯カメラは会長の意向で稼動しておらず、レストラン周辺も完全な人払いをしてあったため、人に知らせるためにお嬢様が走られたのだと思います』
 なんだそれ、どこまでもはた迷惑な会長だなっ。
『医師への通達も済みましたので、このあとは医務室での処置になるかと思います』
 それ以上の情報は持っていないだろう。そう思ったから礼を述べて通信を切った。
「落ち着け……落ち着け俺……」