目にした彼女は力なく座り込んでおり、肩で息をしながら真っ青な唇を震わせていた。
 俺に気づいた彼女は、俺に向かって手を伸ばし、崩れるように横たえた。
「翠葉ちゃんっ」
「お嬢様っ」
「あき……さ、ろ……ん……」
 震える唇で何かを伝えようとするものの、それは言葉にならない。でも、何を言いたいのかはわかっていた。
「翠葉ちゃん、落ち着いて」
 彼女の手を握りしめると、それ以上の力で握り返してくる。とても必死な様子で。
 そして、口を開くたびにひどく咽こむ。
 彼女は手に握りしめていた手ぬぐいとIDカードを俺に押し付けた。
「翠葉ちゃん、わかってるから。大丈夫だから」
 早く医務室に運ばなくては――。