「本当に離婚してくれなんて言ったの?」
「言った。父さんは言ったぞー!」
 いや、威張らなくていいし……。
「でも、その条件……なんか納得できない。仮に、翠葉に害が及ぶのが藤宮に関わっているからだとしても、それを選んだのは翠葉だし……元凶かもしれないけど守ってくれている人たちに向かってそれは――」
「わかってるわよ。でもね、譲れないの。だからこその条件よ」
 たまに母さんの言わんとすることがわからないことがある。そんなときは決まって父さんに視線を投げる。説明して、という視線を。
「つまりさ、俺らは翠葉が傷つくことも望んでなければ、静が離婚する事態なんてのも望んでないのさ」
 まさか……。
「だから、何がなんでも守れ……?」
 訊くと、母さんが満足そうににこりと笑んだ。
 そうか、俺の両親ってこういう人たちだったんだ……。