唯にまんまとしてやられて、俺は母さんたちと一緒に挨拶周りをする羽目になっていた。
「ねぇ、母さん……」
「なぁに? 蒼樹まで神妙な顔しちゃって。似合わないわよ?」
「そうだそうだ。パーティーなんだからもっと楽しそうな顔しろよ」
「や、ちょっと無理だから……」
 そこかしこからの視線を浴びて、普通でいられるほど面の皮が厚いわけじゃない。
「あのさ、話の流れからすると、父さんも母さんもずいぶんと前から藤の会にも会長の誕生パーティーにも顔を出してたことになるよね」
「そうね。私は高校に入ってすぐ藤の会に呼ばれたし……」
「俺は大学入ってからだな」
「それが何?」
「それが何、じゃなくてさ……。秋斗先輩とは初対面だったの?」
「あぁ……そのことか」
 なんだ、とでも言うかのように父さんが俺を見た。