晩餐会が始まる前、俺と秋兄は姉さんたちの部屋を訪ねた。
 すでにイブニングドレスに着替えた姉さんは、
「あら、いいところに来たわね。晩餐会のあと、お茶会開くから残りなさいよ?」
 藪から棒に言われて秋兄と顔を見合わせる。
「で? あんたたちは? 何しに来たの?」
 言おうと思っていたことを先に言われ、先手打たれた状態で何しに来たのかを訊かないでくれと言いたい。
 さすがにこの状況をごまかせる話は思い浮かばず、同じ心境だったのか、秋兄が説明を買って出た。
「あっはははっ! お父様最高っ! あんたたち、お父様に敵うわけがないじゃない」
 視線を外して無視したのは俺、律儀に答えたのは秋兄。
「いえ、むしろ対抗するつもりなんて最初からないんだけど……」