「怒らないよ。披露宴のとき、涼先生としていた会話は聞いていたでしょう?」
「聞いてたけどさ……」
「例外はなし。誰のことも怒っていないし、怒れない。だって怒る理由がないもの。……それに、疑問を抱かなかったのも深く追求しなかったのも私なの」
 こういうところ、面白いくらいに潔い。あんちゃんにもたまに感じるんだけど、この潔さはどこから来るんだろう?
「唯兄はいつ知ったの?」
「……終業式の日。秋斗さんから聞いたんだ。白野でリィと会った人が朗元で、藤宮の会長だって……」
 リィじゃなくったって衝撃は受けた。まさか、会長がリィと会ってたなんて。
 なんで初めて会ったときに名のならなかったんだよっ。だから今になってこんな面倒なことになってんだろっ!? と悪態つきたくなるほどには――。
「不思議だね。知ったときは衝撃が大きすぎて受け入れられないと思った。でも、少し時間が経っただけなのに、今は普通に受け入れられる」
「本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫」