私はステーションの二階にある控え室でメイクと着替えを終え、ブーケを手に時間がくるのを待っていた。
 ノック音のあと、「いいかしら」と顔を覗かせたたのは支度を済ませたお母様。
 お母様はゆっくりと私に近づき、
「湊、おめでとう」
 穏やかな笑顔で言ってくれる。スタッフからベールを受け取ると、
「……やっぱり、マリアベールじゃベールダウンはできないわねぇ」
 少し困った顔で私の正面に立った。
「今ならお母様の気持ちがわかるわ。このベールに一目惚れしてすべてを決めてしまったけれど……。やっぱりベールダウンしたいわ」
 今、お母様が手に持っているのは、お母様が結婚するときに使ったベール。
 マリアベールだとベールダウンはできない。