光のもとでⅠ

 栞さんのお手製ベイクドチーズ。
 タルト生地は、市販されているクッキーを砕いて溶かしバターを混ぜたものを型に敷き詰める。そこへチーズクリームと生クリーム、砂糖、卵、レモン汁をミキサーにかけたものを流し込み焼かれている。
 香ばしいタルト生地と少し甘酸っぱいチーズクリームのバランスが絶妙。何度食べても美味しいと思う。
 そんな美味しいケーキを食べながらも、私の頭には人の死が居座っていた。
 時々、自分が死ぬことは想像するし想像できる。でも、自分ではない誰かがいなくなってしまうことはどうしても想像することができなかった。
 お墓参りに連れて行ってほしいとは言えない。でも、静さんの家にはお仏壇があるだろうか。
 もしあるのなら、お線香を立てたい。
 でも、会ったこともない私がお線香を立てたら間宮さんが困ってしまうだろうか……。
 ならばレクイエムを――。
「栞さん、ピアノを弾いてもいいですか?」
「どうぞ」
 そう答えた栞さんはいつもの栞さんと何も変わらないないように見えた。
 でも、見えただけ。表面だけだった。
 それに気づいたのはもっと先のこと。