秋兄にエスコートを譲ってレストランに行くと、晩餐会のときとは違うテーブルセッティングになっていた。
 家族ごとのテーブルに着き、一言二言朝の挨拶を交わすとウェイターがオーダーを取りに来た。
 メニューは和食洋食を選べるようだが、同じテーブルについている人間が皆洋食なのだから、ここは合わせるべきだろう。
「洋食で」
 答えると、すぐにあたたかなパンやコーヒーが運ばれてきた。
 テーブル中央には花が飾られたケーキスタンドがあり、オレンジ色のゼリーが並んでいる。
 翠が好きそう……。
 思いながら、レストランの出入り口に目をやるも、人が現れる気配はない。
 すでに、秋兄と翠の席ふたつを残しすべての席が埋まっている。