なるほど、これは確かに飲み込みが早い。
「踵から着地して重心移動をスムーズにね」
「はい」
素直な返事が耳に心地よく響いた。
「うん、いいね。歩幅が広がった。残るは視線かな? 不安だからといって視線を足元に落とさないように。ここはホテルの中だから足元に障害物はないよ」
「でも……」
「騙されたと思って十メートルくらい先。回廊のカーブのあたりを見て歩いてごらん」
ほら、と促すと、彼女は少しずつ視線を上げた。
その様は、顎を少し引いた状態でとても美しく見える佇まい。
数歩歩くと、歩幅が広がり進むペースが上がる。
「どう? 騙された気分は」
笑いながら訊ねてみると、
「あの……すみませんでした」
「ん?」
「……騙されてませんでした」
かわいらしい謝罪に破顔する。
「踵から着地して重心移動をスムーズにね」
「はい」
素直な返事が耳に心地よく響いた。
「うん、いいね。歩幅が広がった。残るは視線かな? 不安だからといって視線を足元に落とさないように。ここはホテルの中だから足元に障害物はないよ」
「でも……」
「騙されたと思って十メートルくらい先。回廊のカーブのあたりを見て歩いてごらん」
ほら、と促すと、彼女は少しずつ視線を上げた。
その様は、顎を少し引いた状態でとても美しく見える佇まい。
数歩歩くと、歩幅が広がり進むペースが上がる。
「どう? 騙された気分は」
笑いながら訊ねてみると、
「あの……すみませんでした」
「ん?」
「……騙されてませんでした」
かわいらしい謝罪に破顔する。


