秋兄は、苦笑しながらテーブルに用意されたカップに手を伸ばす。ふたつのカップを並べると、
「司は選んでほしいんだろ? なら、そういうシチュエーションを作らないと」
 結果、困らせることには変わりない。けど、秋兄が言うことには一理ある。
 言葉で選ばせるより物理的に選ばせる。そんな方法もあったのか、と少し意表をつかれた気分。
「じゃ、部屋に戻るか」
 俺たちは、御園生家が使うゲストルームの隣に位置する土星――サタンへ向かって歩きだした。