「そうですね。決して暇つぶしにここへ来ているわけではありませんね。診察の合間を縫って来ていますので、おとなしく診察させていただけると嬉しいのですが」
「あの……私、消化器内科の予約は入ってませんし、お忙しい先生自ら出向いていただかなくても……」
 あくまでも診察を拒むスイハを母親がピシャリと一蹴する。
「翠葉っ、時間を割いて来てくださっているのにその言い方はないでしょうっ!? 涼先生、すみません……」
「いえ、いいんですよ。お嬢さんの言うことも一理あるので。私が放っておけなくて診に来ているにすぎませんから」
 よくある患者保護者と医者の図を見ていると、患者本人のスイハは実に居たたまれない顔をしていた。
「では診察をするのでこちらへ。お母さんは廊下でお待ちください」
「はい、よろしくお願いします」