縮みあがった蛙と、獲物をロックオンした蛇。そんなたとえを想像しながら見ていると、
「では、脈を見せてください」
 スイハは仕方なしに右手を差し出し捕まった。
 捕獲完了を見届けてから口を挟む。
「スイハ、あんま手間取らせんな。その人、一応多忙な身なんでな」
 打ち合わせの時間をこの時間にしたのも、移動のタイムロスをなくすためだろう。打ち合わせも実に簡潔に終わった。
 人が多く、意見もさして出揃わない無駄な会議をやられるよりも眠くならなくていい、と零したことがある。
「うちではそのような会議は行われませんよ。もし、そのような会議をしていたら減俸ものですね」
 涼先生はにこりときれいに笑ったが、俺には底冷えする笑みにしか見えなかった。