先日と同様、今日も九階には涼先生の姿があった。
 それは来年四月、藤宮病院内に相馬鍼灸治療院別院を立ち上げるための打ち合わせ。
 しかし、その打ち合わせが終わってもなお腰を上げようとしない。
「今日もですか?」
「えぇ、今日も、ですね」
 医者自ら足を運んで診察をしにくるとは――それだけ熱心な医者なのか、スイハの状態が極めて悪いのか。
「貧血が……」
「は?」
「貧血が進んでいるような気がするんです」
 貧血……。
 その言葉に少し考える。涼先生は消化器内科担当。ともすれば、「貧血が進む」の意味はひとつしかない。血液成分上に起こり得る貧血。脳貧血とは別物だ。