俺は斜め後ろに一歩移動し、マフラーの上から翠葉の肩を掴んだ。
 まだ強張っている身体を優しくマッサージしてほぐす。
 翠葉……距離を測りあぐねているのは翠葉だけじゃないよ。俺もだ。
 何を訊いたらいいのか、どう訊いたらいいのか、俺も悩んでる。
 何をしてあげられるのか、何もせずに見守ることが正しいのか、常に考えてる。
 時には間違えることもあるかもしれない。でも、大切なことだから悩むんだ。
 翠葉が今悩んでいることも、きっと翠葉にとってはすごく大切なことだから……。なら、思う存分悩めばいいと思う。
 ただ、その傍らに俺と唯がいることだけは覚えていてほしい。そして、視野を広げれば、桃華や佐野くんたちがいることも……。
 いつか、気づけるといいな。