「翠葉があまりにも落ち込んでるようだったら伝えてくれって言われてた。……私たちは友達だから、たまにきついことを言うかもしれない。でも、それで友達をやめるとか離れるとか、そういうことは考えてない。佐野も同じ。私も佐野も、どうでもいい人間が相手なら何も言わずに離れてる」
 一言一句違わずに伝える。
 届け――桃華や佐野くんの想い。真っ直ぐ、届け……。
 翠葉はずっと下を向いたまま涙を流していた。
 今、何を思っているだろう……。何を感じているだろう。
 ちょうど開けた広場に出たとき、日の出の兆候が山の稜線に見え始めていた。
「リィ。顔上げてごらん」
 翠葉は上半身を揺らすようにして拒んだ。けれど、
「いいから、あーげーるーっ」
 唯は翠葉の頭を両手でおさえ、無理矢理前を向かせる。