光のもとでⅠ

 翠葉にも、気持ちを切り替えることができるようなアイテムがあるといいんだけど……。
 翠葉にとってのピアノは一種それに近いのかもしれない。けれど、あれはリセットするとかそういう類ではない。どちらかというと、抱えきれなくなったものが溢れ出す……。そんな感じ。
 そういうのではなく――ストレス発散。リセット。そうできるものが見つかるといい。

 少し先に翠葉たちの姿が見えた。
 徐々に走る速度を緩め、翠葉たちを追い越す瞬間、
「うっわ……スライドでかっ」
 唯の声。
 そりゃね、速く走ろうと思えばスライドも大きくなるってものです。
 俺が止まったのは翠葉たちから六メートルほど先だった。
「久しぶりに本気で走ったっ」
 短距離を全力で走りきるのとは全く別の快感。週に一度くらいはこのペースで走るのもありかもしれない。
 そんなことを考えながら屈伸をすると、すぐそこまで翠葉が来ていた。