「訊くのは簡単だよな。何も考えずに、どうした? って訊くのはすごく簡単。でも……話してもらうのは難しいな。前はなんでも話してくれたんだけど、今はそうじゃないから」
 あんちゃんはどことなく寂しそうな表情になる。
「ただ、俺にも変化があって、情報源が多少増えたかな?」
「何それ、秋斗さん?」
「まさか」
「じゃぁ、桃華嬢だ」
「ピンポン」
 軽快に、長い人差し指を立てて教えてくれる。
「ちょっとクラスで……いつものメンバーと一悶着あったみたい」
 それ、聞かせてもらえるの? それとも、そこまでしか言わないつもり?
 気持ち盛りだくさんの視線を送ると、
「そんな目で見なくったって話すよ。情報の共有は大切でしょ? ってことで、上に行くか」
 俺はリィの部屋のドアを見てから、「了解」と答えた。