遅い……遅い遅い遅いっ――。
 キッチンで時計を見ながら若干イライラ。
「唯ー? それ以上切ると自分の指切っちゃうわよ?」
 はっとして手元を見た。
 俺が今手にしているものは右手に包丁、左手に長ネギ。あと二センチで長ネギが終りを告げようとしていた。
「翠葉が帰ってくるのが遅いからイラついてるの?」
 碧さんに言われ、むぅっとなる。
「だって終業式が終わってから小ガッコに行って動物を見るにしてもそろそろ帰ってきていい頃じゃないですか? あんま長居すると身体冷えるし」
 碧さんは俺をまじまじと見たあと、クスクスと笑いだした。
「きっともうすぐ帰ってくるわ」
 そう言った直後、玄関で物音がした。