光のもとでⅠ

 どんな顔で出て行けばいいのかわからなかった。
 今すぐに抱きしめたいけど、そんなことをしたところで彼女を困らせるだけだ。
 ひとり言を聞かれているとは思いもしないだろうし、さっきの会話を聞かれたなど、微塵も思っていないはず。
 これは言うべきか、言わないべきか……。
 けれど、彼女の原動力になるのであれば、言う意味はあるかもしれない。
 俺は腹を決めて表に回った。
「翠葉ちゃん」
 顔を上げた彼女の目は空ろだった。泣いているかと思ったけど、涙は見えない。
「秋斗、さん……」
「長居すると身体に障るよ」
 彼女は、ゆっくりとした動作で時計を見たけれど、その目には何も映っていないように思えた。