高等部敷地内にある駐車場に車を停め、桜香苑へ足を向けた。すると、校舎にもたれかかりこちらの同行を見る人間がひとり。――司だ。
「まるで俺がここを通るのわかってたような感じだな?」
「まぁね。あの人、意外と律儀だから。秋兄に流す情報はたいてい俺にも流してくれる」
 言わずと知れた唯のことだろう。
「……秋兄が今行ったところでどうなるとは思っていない。けど、余計なことは言ってほしくもやってほしくもない」
「…………」
「パレスでも言ったけど、もう一度言う」
 壁から背を離し、司は俺の真正面に立った。
「翠から手を引くとか俺に譲るとか、そういうの嬉しくないから」
「そんなつもりはないけど……」
「けど? ――今の翠は見るに耐えない?」
 お見通しか……。